2017/05/22(月)マリーンズドキュメント

第10話 誰よりも笑顔だった人は

 真夏のような熱気だった。ホームを踏むと、ベンチはすでにお祭り騒ぎだった。仲間とてのひらを合わせて喜びを爆発させ、ZOZOマリンスタジアムのライトスタンドに向けて、グータッチの拳を突き出す。その後、守備につく際に大音量のコールを受けると、深くおじぎをして、一緒に戦ってくれた声を称えるように、ファンに対して拍手を送る仕草をみせた。5月21日の楽天戦。8回に決勝の逆転2点本塁打を放ったのは鈴木大地だった。

「守りに入ったら絶対に打つチャンスは少なくなると思っていたので、1打席目から様子を見ようとした球はひとつもなくて、全部勝負をかけていました。打ちにいったことが結果につながったと思います。結果、僕がこうして打ちましたけど、投手陣が頑張って抑えてくれましたし、野手もチャンスは作っていたので、諦めない姿勢が少しずつ結果に出てきていると思います。勝ち越すとか、何連勝するとかではなく、1試合ずつ、1プレーずつを大事にしていきたいです」

 5月を迎えて黒星が続いた時期は、試合中に厳しい表情が目立った。膨れ上がる悔しさを押し殺し、時に零しながら、歯を食いしばって戦った。それでも、連敗を喫する最中、試合前の練習でロングティーに打ち込む鈴木の表情は笑顔だった。一振りごとに大きくリアクションをとって手応えを確かめながら、ずっと笑っていた。気持ちが沈んでもおかしくない状況下、誰よりも明るい顔を見せていたのは鈴木だった。思い通りにならない日々に、白星を逃すたびに切り替えて、翌日のグラウンドには、いつだって元気なキャプテンがいた。一番にチームのことを思う選手が自ら望みを捨てるはずがなかったし、その姿勢はすぐに仲間にも浸透していった。

 キャプテンだから、責任感が強い人だから、全て一人で背負い込んでしまうのではないか。そう心配する声が聞こえてきても不思議ではなかったけれど、逆転弾を放って勝利した日、鈴木が試合後に残したのは、そんな心配は要らないのだと逆にこちらを励ましてくれるような言葉だった。

「背負っていた、ということはありません。井口さんも福浦さんも、他にも頼れる上の選手がいて、逆に僕自身が引っ張ってもらっていました。僕らだけではなくて、ファンの方も一緒になって戦ってくれています。ただ、キャプテンをやっている以上は先頭に立って声を出していこうと思っていますし、勝てない状況が続きましたけど、この先もっともっとチームの中心でやっていきたいので、(この連敗は)良い経験になった、と後から自分たちで言えるように、ここから頑張るだけだと思っています。だから、大丈夫です」

 苦しいときに誰よりも笑顔だった人は、やはり誰よりも笑って、勝利を喜んでみせた。

長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズ オフィシャルライター)=文 text by Miho Hasegawa