2017/08/31(木)マリーンズドキュメント

第16話 明日を信じること

猪本健太郎

 まさに、一寸先はパラダイス。二軍球場で汗を流していた選手が、翌日に一軍のヒーローとして拍手喝采を浴びる。猪本健太郎は自らの座右の銘を体現してみせた。

 一軍の舞台に戻った8月29日のオリックス戦。7番・一塁手でスタメン起用された猪本は、中盤に巡った満塁の場面で貴重な2点適時打を放った。「接戦だったので必死でした。力が入りすぎていたので、あの打席はリラックスしていこうと思いました」という勝ち越し打は、猪本にとって9年目のプロ初打点だった。
 試合前の円陣では、声出しを担当してチームメイトを笑顔にした。試合後のヒーローインタビューも、ZOZOマリンスタジアムのファンと喜びを分かち合う『We Are』も、この日は猪本の独壇場だった。皆でハッピーバースデーを歌って伊東勤監督の誕生日を祝いながら、猪本の存在は勝利の熱気をどこまでも色濃くしていった。

 プロの世界が目まぐるしい競争であることは十分に知っている。育成ドラフトで入団した福岡ソフトバンクホークス時代を経て、昨秋のテスト入団で千葉ロッテマリーンズの一員となった。今年5月に一軍昇格したとき、持ち前の明るさはマリーンズに新たな風を吹き込んだ。再び二軍生活を送るようになってからもその姿は変わらず、ピンチを迎えた投手がいればすぐに駆け寄り、居残り練習に励む自分以外の選手のことも明るく鼓舞する。数年後を見据えた意気込みを語る若手選手に向けて、「自分たちは単年契約なのだから一年勝負。まずは今年だ」と言葉を投げかけたのは、紛れもない本心だったのだろう。

「どこであっても野球は変わらないので、(二軍にいた頃も)一軍と変わらずにやろうと肝に銘じていました。自分なりの覚悟を持ってやっています」

 良くも悪くも、明日なにが起きるかなんて誰にもわからない。ならば、明るい未来を信じて前に進めばいい。うまくいかないことがあっても、プラス思考でいる限り、きっと物事は好転していく。ZOZOマリンのグラウンドで輝くヒーローは、そんなことを教えてくれた。


長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズ オフィシャルライター)=文 text by Miho Hasegawa