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長期療養児の自立・コミュニティ創出支援事業「TEAMMATES」活動レポート【No.2】

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2022.09.07

千葉ロッテマリーンズに“入団”した、小学5年生の宇都宮幹汰くん。
登録名が「KANTA」に決まり、2022年8月28日(日)にZOZOマリンスタジアムの始球式を務めました。

大役を任されたのは、本番2週間前のことでした。マリーンズの活動を始めるまで野球未経験だったKANTA選手は、始球式という大舞台に驚きながらも、気合に満ちていきました。野球ノートをつけることを欠かさず、公園などでも地道な努力を続け、本番数日前にZOZOマリンの室内練習場のマウンドで投げたときには、ナイスボールを連発していたのでした。

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そして、始球式当日。熱気が渦巻くスタジアムに隣接する室内で最終調整をしたKANTA選手は、「心臓がバクバクで飛び出しそう」と心境を明かしながらも、臆することはありませんでした。

「いろんな人が見に来てくれているから、楽しみもあります。ストライクを投げたいけれど、マウンドに立てること自体がうれしいので、まずは自分の悔いのないようにボールを投げたいと思います」

ZOZOマリンのビジョンに名前が映し出され、自ら選んだ曲が流れ、KANTA選手はリリーフカーに乗って登場しました。
マウンドに到達すると、その日の先発投手である小島和哉投手がそばにいて、後ろを守るのはマリーンズのチームメートです。

ファンの拍手が追い風となり、投じた渾身のストライク。

始球式は見事成功し、ベンチ前で迎えた仲間とハイタッチをします。井口資仁監督からは「緊張してたね!」と笑顔で話しかけられ、バッテリーを組んだ佐藤都志也選手からは「ナイスボール!捕りやすかったよ」と声をかけてもらったそうです。

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悔いのない投球ができたことを、KANTA選手は晴れやかな表情で語ります。

「リリーフカーに乗る前から緊張していて、手も震えていたからどうなるかなと思ったけれど、実際にマウンドに立つと、小島投手たちがいたから安心して投げられました。今日の1球のために何回も何回も投げて、その成果がノーバウンドのボールになったので、やっぱり努力は大切だなと思いました。これ以上の緊張はないと思うので、緊張に強くなったかもしれない。うまくボールを投げられる一歩になったと思います」

この投球に、チームメートも奮起しました。試合は快勝し、勝利のハイタッチをするために再びグラウンドに登場したKANTA選手。総勢5人のヒーローインタビューを見守るなど、初めての経験がまた増えました。

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KANTA選手は、これまでの日々を振り返ります。

「どの活動も楽しくできています。選手たちは活躍するためにたくさん努力しているから、人と接する機会は少ないのかなと思っていたけれど、みんなが気にかけてくれて、優しくしてくれています」

入団してまもない頃、初の練習見学で井口監督がグラウンドを一緒に歩いて案内してくれたこと。髙部瑛斗選手や三木亮選手をはじめ、全員がチームメートとして仲良く接してくれていること。マリーンズの“選手”になったからこその感動がたくさんあるようです。

この夏、KANTA選手は学校の自由研究にも熱心に取り組みました。中村奨吾選手たちにインタビューをして、ZOZOマリンとロッテ浦和球場の施設見学をして、球団関係者に裏方の仕事についても教わり、マリーンズの全てが詰まった自由研究を完成させました。

若手が暮らす寮を見学したときは、寮長が秘話をたくさん披露。佐々木朗希投手がKANTA選手のことを「自分の弟のよう」だと話しているというエピソードも飛び出しました。その場に佐々木朗投手は不在でしたが、「今日は会えなくてごめんね」との伝言を寮長から聞いたKANTA選手は、佐々木朗投手への手紙を書き残し、自分の気持ちを伝えていたのでした。

8月には、ZOZOマリン名物の花火打ち上げのアナウンスも務めました。緊張しながら出番を待っていたKANTA選手は、そばで観戦していたファンの応援に後押しされてグラウンドへ駆け出し、たちまちマリーンズの景色に溶け込んでいきました。

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「楽しく野球の練習ができているし、いろいろな人に教えてもらっているからこそ成長のスピードが速いと思います。ひとつの工夫でプレーが大きく変わるんだとすごく思います。バッティングは打てると気持ちいいし、投げるのは前から得意だったから楽しい。プロはレベルが違うなと思いました。感謝の気持ちをもって、選手になったからにはしっかりとやらないといけないと思います」

“今後、どのような選手になっていきたいか?”
その質問に対するKANTA選手の回答は、野球を子どもたちの“きっかけ”にしてもらいたいという、「MARINES LINKS」の原点を思い出させるものでした。

「家でも試合を観ているし、マリーンズの活動は野球をするきっかけになりました。入団会見をして、野球って楽しいなと思って、少年野球にも入りました。いろいろな活動を通して自分も成長していくから、その中で感じる気持ちの変化を大切にしていきたいです」

全ての挑戦にしっかりと向き合い、周囲の期待を大きく超えていく。活動を重ねるたび、KANTA選手の存在は輝きを増しています。

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文:長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズ オフィシャルライター)

TEAMMATES とは?

球団の社会貢献プロジェクト「MARINES LINKS」は、認定NPO法人Being ALIVE Japanが企画・運営する「TEAMMATES(チームメイツ)」事業に参画しました。パートナー企業である株式会社リンクス・ビルドと共に、長期治療を必要とする子どもの自立支援とコミュニティ創出の支援をする、プロ野球界では初の取り組みです。
小学5年生の宇都宮幹汰くんは、急性リンパ性白血病で長期療養中です。2022シーズンが終了するまで、ZOZOマリンスタジアムやロッテ浦和球場で活動をします。

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